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前回このブログではサウンドシステムプランニングについて、デザインエンジニアの役割や関与について記載しました。今回のパート2では、英国のインテグレーションカンパニーDESIGN AV社のDamian Orritt氏にオーディオシステムの設置の実際についていくつかの事例を紹介してもらいたいと思います。

“実際の現場では自身で出来ると思われても、設置についてはスペシャリストにサービスを依頼した方がコストを節約できます。設置とセットアップが早く行え、ミスも抑えられます。そして、それらのサービスを提供する会社は質の高いプロ用機器の販売会社とも密接に繋がりがあります。我々のアドバイスや専門知識が価格に含まれているのです。”

イギリスのコッツウォルズ地方のチェルトナムを拠点とするDESIGN AV社は2007年に設立されたAVシステムをホテルや会議場に納入設置を行う会社です。現在では企業や商業施設、サービスやレジャー施設市場においてのリーディングサプライヤーとなっています。Damian氏は自身でこのビジネスを25年に渡って行ってきました。“今までこのような仕事で電気製品メーカーが請け負って成功した事例を見たことがありません。それが例え小さなプロジェクトであっても良いインテグレーターによるアドバイスが不可欠で、それにより例えば建設と内装工事と同時進行のような場合でも可能な限りスピーディーに進めることができます。プロによるアドバイスとはシステムのクオリティに妥協することなく、またクライアントが結果に満足せずやむなく追加費用を生じるといったことがないよう、適切な機器を選定し、正しい位置に取り付けると言うことを意味します。”

Damian氏は(本ブログ#1でCaroleも同様なコメントをしています。)一番最初に理解しておくべき事項として、システムで何をしたいか?ということが重要だと強調します。

“例えば、日中はBGMを流し、週末にはバンドやDJが登場するか?システムが異なるゾーンを担うのか?システムの誤操作を防止するためにどのようなレベルの制御が必要か?などが多目的スペースの場合には考えられます。”

我々はこれらの質問をシステム計画時に多くの顧客が見落としているようなことを1つずつ確認していきます。同時にアンプを設置する安全な場所も探ります。

“例え非常に小さなシステムであっても、必ずアンプやプロセッサー、入力系の機器の設置場所は気を付けないといけません。特にシステムをゾーン単位で設計する際はアンプチャンネルが多くなるため重要になり、同時にアンプの冷却についても考慮します。もしアンプが高温になると、故障や保護機能が働き、音が止まってしまうことがありますが、これらは機器の保証範囲には含まれていません。”

DESIGN AV社は最近個室のダイニングルームとミーティングスペースが併設されるハイエンドなレストランから依頼を受けました。“提案されたアンプラックの設置場所がキッチンの天井裏で換気もありませんでした。このような計画だと、ただ機器を適切な場所に移動するだけですが顧客に対しては追加費用を強いることになってしまいます。”

サウンドシステムをマネージメントすると言うことは顧客に寄り添う必要もあります。“壁面に取り付けたパネルでローカルコントロールする場合、そこにスタッフが自分のデバイスを接続できるように入力を設けることも良くあります。しかしながらこれはボスの不在時にバーのスタッフや清掃員が自分のiPhoneを接続してメタリカを大音量で流す恐れもあるので余り良いアイデアではありません。音量についてはお客様や近隣住民の両者に気を配らないといけません。最悪の場合は所在地域の法令、条例に違反し、営業許可すら怪しくなるかもしれません。経験豊富なインテグレーターを使うことでこのようなことは実際に事故が起こる前の設計段階で抑制しておくことができます。”

各地の法令や条例では内部に対する音量に規制がある場合もありますが、全てが把握できていればシステムデザイン時に起こる可能性のある問題を抑制することが可能です。“

Damian氏はシーリングに取り付けるスピーカーへの要望に対して最も大きな懸念事項を語ります。“壁と天井は似ているようで全くの別物です。多くの方々が全てを天井に取り付けてほしいと言われますが多くの場合奥行きが無く、かつ配線を隠すためにケーブルや空調機器や照明機器があったりします。更にこれらとサウンドシステムのケーブルを混在するとケーブル間で干渉を起こす可能性もあります。特にケーブルを隠して配線する場合には、オーディオケーブルと主電源ケーブルを分離する必要があるのでプロのアドバイスが必須です。”

彼は実例として大型のホテルの宴会場の天井に70台以上のシーリングスピーカーを設置していた案件を例に挙げます。“そこは、宴会場の真上がベッドルームでフロア間の防音処理は全くされていませんでした。結果は皆さんのご想像通りです。”

また近年多い要望としてワイアレススピーカーがあります。“電源は必要になるので実際には完全にワイアレスではありません。電源ケーブルをスピーカーまで引くのであればスピーカーケーブルを引くことと変わりません。それにより商業空間で複数のゾーン全体に渡るキャビネット全てにワイアレスオーディオストリームで信号を送信する煩雑さや問題などを回避できることを考えるとおのずとどちらが良いのかが分かるかと思います。”

“より大規模なAVプロジェクトでは、非常放送設備の統合やネットワークオーディオが適切に構成されているか等顧客の予算を抑えながらこれらの異なる疑問を解決する必要があります。しかしながら会場の大小問わず問題となるのがメンテナンスです。我々DESIGN AVのようなプロのインテグレーターは、壊れた機器の交換や直ぐにエンジニアを派遣するなどの顧客の要望に応えられるようにいくつかのサービスパッケージを用意しています。DESIGN AVでは顧客とリモート接続して診断や故障部分の特定ができるようなサービスも行っており、実際にエンジニアが出向く前に問題が解決することもあります。”

“音と映像のシステムは、他の分野の重要なビジネスのサービスと同じだと思います。”とDamian氏。“プロフェッショナルなカンパニーに依頼することで、当然コストは増えますが、機器の製造メーカーのパートナーであり技術的品質、見た目の仕上げ、そしてアフターサービスの両面においてベストなソリューションを提供してくれるはずです。”